夏を過ぎたあたりの風

夏空の下、ふと思い出した薄寂しい灰色のパリ。チュイルリー庭園では、不規則にばら撒かれた椅子の隙間を広葉樹林の枯れた葉が可憐に踊り、裏路地に隠れたバーのテラスでは、サングラスに漆黒のワンピースを着たマダムが肌寒そうに紙タバコをふかす。煙は早々に吹かれ、ほとんど真っ青な宇宙に飲み込まれた。エッフェル塔では若い男女がアムールを交わし合う。それと同時にエッフェル塔裏の横断歩道を渡る老夫婦が "C'est la vie." を思う。