詩集
雨音
何も知らなかったあの頃
ただただ雨の音を聞いていた
「ポタポタポタリ」
落ち着くなあ
あれから色んなことを知って、大切なことを忘れてしまう時もあるけれど、
さあ今日は、何も考えず
ただただ雨の音を聞こう
君が君であるために、今日も雨は無為に落ちていく
何も考えず、何も知らず、ただおもむろに
蛍 2020.06.23
シャンシャンとそしてテンテンと
蛍は田の上、森の中
川の流れに流されぬよう
一生懸命光ってる
僕はここにいるんだぞ
そんなことを考えたり考えなかったりしながら
情緒 2020.05.28
まずは情緒から積んだプライド。
楽しいなら続ければいいし、楽しくなければやめればいい。
ただ、自分の情緒を裏切ってはいけない。逃げれば積み上げた情緒(自信)をぞんざいに扱うことになる。
それが良い逃げなのか悪い逃げなのか。
自分の情緒を大切にして進みなさい。
それ以外はどうでもよいもの。
ゆとりを持って、軽くなりなさい。
雨の味 2020.10.28
毎年の雨は、過去の感触を懐古させる
私がまだ私ではなかった頃、私に触れるすべての神が、私の味方であった
自分という枠が存在しない時代
小さなしゃぼん玉も大きなしゃぼん玉も私の体の一部となって
外の神と触れる瞬間
風 2020.08.24
風は見えなくともある
コックピットでは、風の音も風が肌に当たる感覚もないのに、
知らずともルートは逸れている
五感で捉えられない何かが確実に我々を招いている
空を飛んでいると、日常の前後左右という2軸平面が壊れ、上下が加わった3軸空間となる
フワフワとした、新しい感覚への入り口だ
さくら時間 2020.04.04
マイナスイオンの生き生きとした香り、人間を深い懐で包み込む自然の静けさ、自分よりも遥かに背の高い木々がひしめきあいながら万華鏡のように光を操る森の薄暗さ、葉は擦れ、鳥は囀る
そんな何気ない五感以上の感覚が昔の記憶を呼び戻す
オーストラリア・ヌーサで友達と日暮れ前に慌てて手を握った広い自然公園で崖から見た広大な無人の太平洋、巨大な満月への叫び
大きなものに包まれ、凡庸な悩みの小ささに気づかさせてくれる時間
時の流れを告げるのは、ただ散る桜の花びらだけであると実感した、寺の片隅にて